第8回
2018.06.29
意識して摂取したい「イソフラボン」
イソフラボンは前立腺がん予防食材の代表。
- 井手
- 前回はコーヒーが前立腺がんの発症リスクの低減には有効な飲み物であるかもしれないというお話をしましたが、「これを食べれば、これを飲めば前立腺がんが防げる」というものはありません。
しかし、豆類、とくに大豆に多く含まれるイソフラボンの摂取は血中のSHBG(性ホルモン結合グロブリン)という物質を増加させ、前立腺がん細胞の増殖を抑制することが実験でも示されていて、日本でも臨床試験が行われています。
- ──
- 欧米人に比べるとアジア人の前立腺がん発症率が低いのも、大豆製品の多い食生活が関与していると考えるのは自然なことですね。
- 井手
- そうですね。
- ──
- ただイソフラボンと聞くと、女性ホルモンの「エストロゲン」に似た働きをして、美と健康をサポートしてくれる抗酸化成分という認識がありますが。
- 井手
- その通りなのですが、エストロゲンには前立腺上皮細胞のがん化を抑える働きもあるんです。
- ──
- 男性が積極的に摂っても支障はないのでしょうか。
- 井手
- 一般的に男性ホルモン、女性ホルモンという言い方をしますが、男性にも少量ですけれど、エストロゲンが分泌されています。逆に女性も男性ホルモンを分泌しています。男女で割合が異なるだけです。しかもエストロゲンの力はイソフラボンの力の及ぶところではありませんから、男性が女性化するなどということはありません。ご心配なく。
イソフラボンはコレステロール値低下にも一役。
- ──
- なるほど。イソフラボンを多く含む食品として代表的なのはやはり豆腐でしょうか。あと手軽に摂取できるものとしては、納豆、煮豆…、厚揚げもいいですね。
- 井手
- 日本の食生活に欠かせない味噌、醤油も大豆が使われています。 さらに大豆由来のイソフラボンは前立腺がんの予防だけでなく、血液中のコレステロール値を低下させるのにも役立っています。
- ──
- この連載の第5回目のところで、全がん種で見た場合はコレステロール値と発がんリスクは関係がないけれど、前立腺がんにしぼると、コレステロール値が高い人ほど前立腺がんになりやすいという結果が出ているというお話がありました。
- 井手
- よく覚えていますね。
- ──
- ただ、イソフラボンがいいと知ると、毎日豆乳を飲んで、豆腐を食べて、ヨーグルトにはきな粉をかけるくらいな勢いで摂取しようとしがちです。摂取しすぎの弊害などはありますか。
- 井手
- 平均的な日本人(15歳以上)の大豆イソフラボン摂取量は一日当たり18mgと言われています。食品安全委員会は、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」の中で、一日摂取目安量の上限値を70~75 mg/日とし、上限値を超えたからといって直ちに健康被害に結びつくというものではない」と示していますが、なにごとも過剰摂取は注意です。
- ──
- ちなみに木綿豆腐は100gあたり32〜56mg、絹ごし豆腐は26〜61mgの大豆イソフラボンが含有されていると、農林水産省が発信している情報(http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_daizu_qa/#b10)にありましたが、イソフラボンをサプリメントで摂取するという方法もありますね。
- 井手
- イソフラボンは前立腺がん発症の予防に有用なサプリメントとして日本でも臨床試験が行われているところです。
- ──
- どのような結果が出ているのですか。
- 井手
- 現在までの疫学的調査とイソフラボンを用いたランダム化試験のメタ解析の結果は、イソフラボンの前立腺がん予防効果に肯定的で、今後のさらなる検討が待たれているところです。
サプリメントについては、この先の回で触れたいと思います。
第9回
「野菜や魚は積極的摂るべき??」
につづきます