第11回

2018.07.20 選択肢が広がっている保健機能食品

「保健機能食品」には3つのタイプがある。

井手
前回、サプリメントは薬ではなく食品だという話をしました。
──
はい。 でも、食品とは思いづらい部分もありますね。
井手
形状が形状ですからね。しかし、口から摂取するものは食品と医薬品に大別されサプリメントは食品です。そして食品は「紛らわしいから」という理由で、効果効能を表示することは薬事法で禁じられています。

ただ安倍政権は、医療・健康分野におけるサプリメントの効果表示規制を大幅に緩和し、2015年4月に「機能性表示食品」制度をスタートしました。どういう制度かと言うと、生鮮食品やサプリメントの構造機能表示を認めるというものです。

構造機能表示とは、「身体の構造や機能への影響についての表示」のことです。少し難しいかもしれませんが、ついてきてください。
──
わかりやすくご説明を。
井手
現在、日本では3種類の食品が、国が定める安全性や有効性に関する基準を満たす「保健機能食品」として認定されています。

3種類とは「1.特定保健用食品(トクホ)」「2.栄養機能食品」「3.機能性表示食品」です。
──
トクホはマークがついているのでわかりやすいです。花王の「ヘルシア緑茶」とか、サントリーの「黒烏龍茶」とか。キリンの「メッツコーラ」もそうですね。
井手
1.の「トクホ」は、体の生理学的機能などに影響を与える成分を含み、人間での試験によって特定の保健の効果が科学的に証明され、国が有効性や安全性を個別に審査し許可されたものを指します。

2.の「栄養機能食品」はビタミンやミネラルなど、特定の栄養成分の補給のために利用してもらうための食品を指します。栄養成分の配合が設定された範囲内であることが条件で、国の審査はありません。定められた基準に従って、食品関連事業者各自の責任で「栄養機能食品」と表示することができます。
──
よく知られている「栄養機能食品」はありますか。
井手
カロリーメイトやSOYJOYでしょうか。 ここまでは以前からあったのですが、3つめの「機能性表示食品」制度によって「保健機能食品」の選択肢が増えました。

サプリメントにも働きを表示できる今。

──
具体的にはどのような制度なのでしょうか。
井手
生鮮食品やサプリメントにも構造機能表示を認めるという制度です。こちらも国の審査はありません。安全性と機能性の科学的根拠に関する情報を企業の責任において届け出れば、「機能表示食品」として体の構造や機能に関係する表現ができるようになりました。たとえば「健康な骨を作ります」とか「脂肪の吸収を穏やかにします」とか。
──
魅力的なフレーズですけれど、「本当に科学的根拠はあるんだろうか?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
井手
機能性は科学的根拠に基づいたものでなければなりませんし、届け出た情報は消費者庁のウエブサイトで公開されています。商品販売後も、消費者庁が中心となって監視を行っています。
──
機能性表示食品のメリットはどこにあるのでしょうか。
井手
選択肢が増えたことと、商品を選びやすくなったことがあげられると思います。 ただし機能性表示食品もバランスのよい食事や規則正しい生活があってこそ生かされるものであることは変わりません。

トクホも正しく利用してこそ。

──
機能性表示食品としてのサプリメントの届け出は今後増えていくと思われますか。
井手
そうですね。長期的に見ればサプリメントによる具体的ながん予防が可能になるかもしれません。
──
サプリメントによるがん予防に関して高いエビデンスを得たものはあるのでしょうか。
井手
大規模かつ長期間の観察が必要ですから、まだありません。ただし、今後エビデンスの蓄積がなされれば、イソフラボンやクルクミンのようなポリフェノールを用いたサプリメントによる具体的な前立腺がんの予防戦略がより可能になるかもしれません。
──
そうなっていくことを期待しつつ、前立腺がんの強力なリスク因子であるメタボリック症候群を防ぐために3種類の「保健機能食品」を活用していく大いにありですね。
井手
はい。 ただしトクホであっても、同種の食品を摂るよりは健康の維持増進に寄与できるという位置づけで、食生活が原因となって起きる生活習慣病に「罹患する前の人」や「境界線上にいる人」、いわゆる「予備軍の人」が対象です。
──
「トクホの油だから、どんなに揚げ物を食べても大丈夫」などという話はないということですね。
井手
その通りです。 摂取するタイミングも注意が必要です。脂肪の吸収を抑える黒烏龍茶やメッツコーラものなので、脂っこい食事をする時に一緒に摂らなければ意味がありません。
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